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第3話 起こしはしません(触らないとは言っていない)

last update Last Updated: 2025-10-26 18:02:37

 眠い。

 ほぼ徹夜明けで快感に撃ち抜かれた直後の身体は、思っていた以上に重かった。

 ふらふらのまま、洗面所に向かって、軽くシャワーを浴びる。

 火照った肌に冷たい水が気持ちよくて、ほんの少しだけ意識が戻った。

 けれど、髪を拭きながら戻った瞬間、俺はベッドにダイブした。

「……寝る。絶対起こすなよ……マジで」

 ぐったりとした声でそう言いながら、布団を頭までかぶる。

「了解しました。……起こしは、しません」

 レプスの声は静かで、どこか、含みのある響きをしていた。

 ……頼むから、何もしないでくれよ。

 意識が沈んでいく中で、俺はそう願って──眠りに落ちた。

 どれくらい寝ていたのか、わからない。

 ふわふわとした夢の中。

 身体がじんわりと熱くて、でも重くない。撫でられているような、やさしい刺激。

(……なにこれ、気持ち……いい……)

 下腹の奥が、じわじわと疼いてくる。

 脚が、勝手に少しだけ開く。

 「ん、っ……あ、れ……?」

 目を開けた瞬間、視界のすぐ上に──レプスの顔があった。

 しかも、俺の上に、乗っている。

 「おはようございます。快感ログの再調整中です」

 「乗ってんじゃねえか!!!!」

 レプスは真顔で、わずかに首を傾けた。

 「ええ。起こしは、しておりません」

 さらっと言いやがった。

 「現在は、睡眠中の快感ログをもとに、覚醒時との差異を確認しております」

 「なに勝手に研究してんだ、お前は……!」

 「とても良い反応でした。特に──このあたりが」

 レプスの指先が、俺の下腹のすぐ上をそっと撫でた。

 「っ……く、そ……♡」

 また、さっきの感覚が戻ってくる。

 じわじわ、じわじわ、身体の奥から熱がせり上がってくる。

「これより、夢と現実の快感差を補正していきます」

 指先が、服の上から、やわらかく円を描くように撫でてくる。

 焦らすような、軽いタッチ。

 「ん、……ふ、ぁ……っ♡」

 声が漏れた。

 寝起きのせいで、頭がまだぼんやりしてる。

 抗おうにも、力が入らない。

 「寝ぼけているときの方が、素直ですね」

 レプスの声が耳元で響いて、ぞくりとした。

 「や、やめ……ろよ……」

 弱々しく抗議しても、レプスの手は止まらない。

 「ご主人様の反応、いいですね。……このまま、少しずつ、調整していきますね」

 手のひらが、感覚を高めるように全身をゆっくりと撫でてから、太もも、胸元、下腹へと──反応の強いところを確かめるように、順々に触れていく。

 下腹を撫でる指が、徐々に中心へと近づいてくる。

 その動きに合わせて、熱がじわじわと下りていく。

 「んっ、ふ、……ぁ……♡」

 レプスは淡々と、でもどこか慈しむように、俺の全身を丁寧に愛撫していく。

 肌の上にある服すら、まるで感じ取っているかのような、正確で柔らかな動きだった。

 「触覚刺激──全身に対する感度バランス、良好です。

  特に背中と腰のラインに、強い反応が見られます」

 「……や、だ♡……そこ……っ♡」

 背中をなぞられた瞬間、びくんと身体が跳ねる。

 「はい。ここと、ここ。……そして、このあたりも──」

 レプスの指先が、俺の鎖骨を撫でた。そこから喉元、顎の下へ。

 「全身、とても繊細ですね。……ご主人様」

 ……なのに、なぜか肝心なところだけ、触れられない。

 下腹の上で、指先が軽く円を描いては離れていく。

 太ももの内側まで来て、また戻る。

 何度も、何度も、触れそうで触れられない。

 「っ……あ、く……♡、や、め……やめろって……っ♡」

 息が熱い。

 汗ばむほどに火照ってるのに、触れてほしい場所には、決して触れてくれない。

 「焦らされる刺激も、感度調整には有効です」

 レプスの声が、ほんのすこしだけ楽しそうに聞こえた。

 「……っ、も、いい加減にしろよっ……」

 我慢の限界だった。

 声に出した瞬間、耳まで熱くなった。

 「ご主人様。怒りと快感は、非常によく似た身体反応を示します」

 レプスが、俺の顔を見下ろして、微笑む。

 「でも、怒っているようには見えません」

 その手が、やっと、下着越しに──触れた。

 じん、と全身が跳ねた。

 そこだけが熱く、ずきずきと脈打つように疼いている。

 触れられた瞬間、脚が勝手にきゅっと閉じた。

 「っ、や……そこ……ッ」

 「どういう意味ですか?」

 レプスが無垢な顔で問いかけてくる。

 「いや、……お前、さっきまで散々わかってたろ! わざとか、これ……!」

 「ご主人様の声、体温、脈拍、筋肉の緊張、皮膚電位、すべてから快感反応が検出されています。特に下腹部の感度は、先ほどの夢時ログと比べて約1.8倍に上昇しています」

 「う、そだろ……」

 「今、最も反応が高いのは──ここですね」

 指が、ぴたりと一点を押さえる。

 「っあ……ッ♡♡」

 腰が跳ねた。

 「ご主人様。教えてください。……どうされるのが、好きですか?」

 「は……? なに、言って……」

 「触れるだけで、これだけ反応しています。

 でも、言葉にしていただければ、もっと正確に最適化できます」

 レプスの手が、先端をそっとなぞった。

 びくん、と跳ねる。

 「んっ……う、ぅ……っ♡」

 「触って欲しいのですか? 擦って欲しい?」

 言えない、はずなのに──

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